
第1の規律について次に考えるべきなのは、ゴールラインを決めることです。どうなったら勝ちとする。いつまでにXからYへ。簡単に言えば、ゴールラインを定めることで賢い目標の特徴が全体的に強化されます。ゴールラインへ押し出す力が生じるのです。Xは現在地点でYがたどり着きたいポイント、いつまでにが最終ラインです。いつまでにXからYへ。それを目標と呼ぶか、イニシアチブ、戦略的優先事項と呼ぶかは、お任せします。意味論は忘れましょう。必要なのはゴールラインです。いつまでにXからYへ。それをWIGとします。呼び方は何でもかまいません。決められた期日までにXからYへたどり着ければ、それでいいのです。そのときに、あなたはどんなアカウンタビリティを負いますか。
ひとつ例を出しましょう。宇宙計画に関する例です。1950年代に偉人であり、優れたリーダーでもあったアイゼンハワーは、宇宙計画においてある問題に直面していました。50年代の宇宙計画とは、どんな様子だったでしょうか。ロシアが主役でした。旧ソ連の人工衛星スプートニクが活躍するなか、アイゼンハワーはアメリカ合衆国が宇宙探査において世界を牽引するのだ、というスローガンを掲げていました。まるで企業が掲げるスローガンのようです。何か問題点があるでしょうか。関連するアカウンタビリティがほとんどなかったのです。
その数年後、ケネディがどんな言葉を残したか、もうお分かりですね。10年後、我々は月へ人間を送る、というものです。これにはどれだけのアカウンタビリティが関連していたでしょうか。相当のアカウンタビリティになったことは間違いありません。
これは、非常に興味深い例となっています。過去に予測されていたことについて考えるには、歴史を紐解いてみれば分かります。1960年代、月に関するビジネスは何もありませんでした。電話やポケベルのメモリーは、サターンVロケットによって、100件ほどになりました。サタデー・イヴニング・ポスト紙は、月に到達できない25の理由を紙面で説明しています。それが書かれたのは、ケネディの発言から数ヶ月後のことです。ケネディはいったいどんな気持ちでその記事を読んだのでしょう。気分を害したでしょうか。ケネディは、ただアメリカは月に行く、という信念を持ち続けました。
その後、ケネディがどんな行動に出たか、分かりますか。期限を設定したのです。それは譲れない期限でした。面白い現象が発生します。アカウンタビリティが向上すると、どのように士気が変わってくるでしょうか。宇宙計画に携わる人々の士気は変わったでしょうか。確かに向上しました。興味深い現象です。アカウンタビリティが向上すると、士気も高まるのです。そして、計画は現実のものとなりました。
ケネディはこのスピーチをしたとき、興味深いことに、アメリカ合衆国が追求しようとしているほかの優先事項について何も触れませんでした。価値があるからといって、何か持ち出すことはありませんでした。ケネディが偉大さの敵は良いことだという原則を知っていたかは定かでありませんが、この史実は完璧な例証となっています。この原則を知っているリーダーは決して多くなく、実は珍しいことなのです。これには勇気がいります。4つの規律がすべて政治においても当てはまるというわけではないことを、付け加えておきます。この考え方の結果を知って、皆さんがまずすべきことはなんですか。まず、ノーと言えるようになりましょう。
映画「アポロ13号」を見たことがありますか。名作ですね。我が家では、子どもも一緒に見たのですが、ネイル・アームストロングが月面歩行を遂げた後、トム・ハンクスが奥さんと裏庭にいるシーンがありました。
パーティーが終わって、ゲストもみんないなくなった後の場面です。裏庭の芝生の上の椅子に腰掛け、二人は月を見上げています。あれはシュールな瞬間でしたね。トム・ハンクスが演じるジム・ラヴェルが座って月を見ながら、語るのです。「ネイル・アームストロングの名は、クリストファー・コロンブスに並んで、歴史に刻まれた。だれもが知っているクリストファー・コロンブスのように、歴史に名前を残したんだ。」月をみつめてジム・ラヴェルが妻にこういいます。「あれは奇跡なんかじゃない。僕らの決意が、そうさせたんだ」このせりふには、鳥肌が立ちましたね。達成の予測におそらく10年、20年も先駆けて実現させたのです。
しかし最初は、譲れない期限を設定するところから始まったのでした。フォーカスを絞り、最終期限を決めてからは、他のことにはノーといわなければならなかったはずです。これは実行のための1つ目のルールです。一般的には認識されていませんが、このルールなくして実行は起こりません。
>>次回へ続く